Grani Engineering Blog

株式会社グラニはC#を中心として、ASP.NET、Unity、VR開発を行っています。

CES2017でみた独自コントローラと一人称移動ゲーム

f:id:yasa0:20170201171550j:plain CES2017では、昨年に引き続き各ブースでVR関連製品が展示されていました。目立ったものでも、ワイヤレスPC、ヘッドマウントディスプレイ、センサー、サウンドだけにとどまらず、OLEDなどの部品に至るまで多種多様な広がりを見せています。

今回は私が特に注目した、両手両足へ触覚のフィードバックができるコントローラを紹介します!

両手両足に触感が宿るデバイス「Taclim(タクリム)」

f:id:yasa0:20170201171431j:plain 動きによる入力と、触覚のフィードバックに対応したVRデバイスで、両手に持って使用するグローブ部分と、両足に履いて使用するシューズ部分があります。

開発は株式会社Cerevo。Taclim用にカスタマイズした最新鋭のタクタイル・デバイスを合計8つ搭載。VR空間の映像や音声に合わせてシューズとグローブが触感をフィードバックすることで、両手両足にフィールド内の砂や鉄板の踏む触覚や敵を殴った時の衝撃が感じられます。

ファンタジー世界へいざ!

f:id:yasa0:20170201171537j:plain 体験したのは、一人称視点で歩いて迫りくる敵を倒して城の中を進んでいくデモ。両手両足にTaclimを付けてその場で足踏みをします。敵が来るとグローブを持った手でパンチ!コントローラーが振動することで、ちゃんと殴っている感覚がします。 また、砂や鉄板の上を歩いて進むと動きに合わせて、ザッザッという音と感覚がします。その場で足踏みをするため、完全にフィールド内を歩いている感覚とまではいきませんでしたが、感触はまさに歩くときの感覚でした。
手へのフィードバックまでなら、HTC Viveのコントローラと同じで体験したことがある感覚でしたが、足の裏に感じる素材が変わる感覚まで組み合わさると「ちゃんと歩いているんだ」、と実感して筆者は少し感動してしまいました。

デモが終了し、デバイスやヘッドマウントディスプレイを外すとわずかに汗をかいていて、知らず知らずのうちに結構動いていたことに驚きました。

感じた可能性

筆者はこのデバイスは家庭に置くというより、アーケードやジムなどにおいて、ゲームはもちろんフィットネス関係でも活躍しそうだと感じました。なんたって普段3分しないうちに足踏み運動をやめたくなる筆者がそれ以上の時間を夢中で足踏みしてしまったのですから。ジムに置かれているVRデバイスですとICAROSもありますが、ICAROSと同様にぜひとも楽しいフィットネスがTaclimで登場することを、筆者は期待しています。

Taclimの発売は2017年秋頃、価格は10~15万円程度を予定です。

スペック(公式サイトより)

項目 スペック 
グローブ部・本体サイズ 50 ×50 ×147 mm(W×D×H)
シューズ部・本体サイズ 290×100×140 mm(W×D×H)
搭載センサー 9軸(加速度、角速度、地磁気)
タクタイル・デバイス数 8(グローブ部1×2、シューズ部3×2)
ワイヤレス接続 BLE(Bluetooth 4.1)
Sub-GHz(Japan 920MHz/USA 815MHz/Euro 868MHz)
充電方法 Micro USB
利用時間 約2時間(2秒に1回振動した場合)
充電時間 約3時間
開発環境 Unityプラグインを提供予定

※開発中のため製品仕様は変更になる可能性があります

参考: (公式お知らせ)世界初の触感センサー搭載VRシューズ&グローブ「Taclim」開発

Room-Scale Mobile VR の可能性

2017/1/5 ~ 2017/1/8 に米国ラスベガスにて開催された CES 2017。世界最大の家電見本市と言うのは本当で、非常に多くの製品やデバイスの展示がなされていました。その中でも特に気になったもののひとつが Room-Scale Mobile VR として LYRobotix が展示していた NOLO です。

https://scontent.xx.fbcdn.net/v/t31.0-8/15875395_356429498070344_1314860561549668494_o.jpg?oh=089c66c262632114f62da4a5ab39926d&oe=591873FC 画像出展 : NOLO Facebook 公式

特徴

これまでルームスケールで VR を実現するには HTC Vive や Oculus Rift のように専用のトラッキングセンサーが必要で、Daydream や Gear VR のようなモバイル VR では実現されていませんでした。しかし、この NOLO を利用すればモバイル VR を手軽にルームスケール化することができるようになります。

  • 6 軸モーショントラッキングが可能
  • ワイヤレス *1
  • 低レンテンシ *2
  • バッテリー寿命が長い
  • センサー/コントローラーが非常にコンパクト (= 手軽に持ち運びできる)
  • 奥行 6 m くらいまでトラッキングできる *3
  • 希望小売価格 $149 と安価 *4

デモ動画

公開されているデモ動画では PC と有線接続されていますが、これはプレイ画面の出力のためのようで、プレイするだけならワイヤレスで実現可能とのことです。センサーの小ささや着脱の容易さが伺えます。

ブース体験

CES 2017 のブースでは Google の Tilt Brush をプレイすることができました*5。低レイテンシと謳いつつも体感としてはかなり問題がありましたが、説明員によると「会場の Wi-Fi 環境が非常に悪いため」とのことでした。

https://scontent.xx.fbcdn.net/v/t1.0-9/15871717_356881781358449_2791179951162430403_n.jpg?oh=8f71456132efd191845b0bd41f554b97&oe=591B8F04 画像出展 : NOLO Facebook 公式

まとめ

スマホと NOLO だけ持って出かければ、どこでもカジュアルにルームスケール VR 体験ができる。そんな未来が本当にすぐそこまで来ているのだ素直に感じました。どの程度相互干渉があるのかが不明だったりブース体験でのレイテンシ問題などまだ課題はあるかもしれませんが、今後十分注目してよい領域なのではないかと思いますし、NOLO の体験によって今後のモバイル VR への期待感が高まりました。

*1:程度は不明。

*2:程度は不明。

*3:ブースで CEO から受けた説明による。公式サイトでは 13 ft (= 3.9 m) で記載されている。

*4:先着 100 人限定で $89 で販売予定。

*5:Tilt Brush は HTC Vive にしか対応していないはずだが実際にプレイできた。本体 PC の画像を飛ばしているだけなのかは未確認。

CES で出展されていた AR メガネから感じる AR の未来

年始の 2017/1/5 ~ 2017/1/8 に米国ラスベガスで開催された CES 2017 では、前回に引き続き今回も VR / AR が一大トピックとして取り上げられていました。個人的に注目していた AR 分野ではメガネ型デバイスが多くブース展示されていました。その中でも特に良い出来だと感じたものが Osterhout Design Group (以下 ODG) の R-8 / R-9 です。

http://www.osterhoutgroup.com/img/product/r9_side.jpg ※画像出展 : ODG R-9 公式

スペック概要

R-8 / R-9 は透過型のスマートグラスで、仕様上の性能が高く目を見張るものがあります。

  • Qualcomm Snapdragon 805 2.7GHz Quad-Core Processor (CPU)
  • GPS / Glonass (位置検出)
  • 6 軸トラッキング (向き検出)
  • Android ベースの Reticle OS を搭載
  • 通常の Android アプリも必要
  • 明るさの自動調整
  • Bluetooth 5.0 / Wi-Fi 802.11ac / USB Type-C による外部アクセサリ接続
  • 高フレームレートカメラ
  • デュアルマイク
  • 指向性スピーカー
内容 R-8 R-9
視野角 40°以上 50°以上
重さ 約 127g 約 184g
解像度 720px 1080px
記憶容量 64 GB 128 GB
価格 $1,000 以下 約 $1,800
出荷予定時期 2017 年内 2017 Q2

入力はメガネのツルの部分にあるタッチセンサーで行えるほか、スマホアプリやキーボード、マウスなどと無線接続して行うこともできるそうです。

Microsoft HoloLens との比較

以下の動画では ODG AR メガネと HoloLens での見え方の違いを比較していますが、全く引けを取らない美しさやパフォーマンスが見て取れます。ただし、CES 2017 のブース展示で見た範囲では綺麗に表示されているが周辺を暗くし過ぎて (= サングラス具合がキツくて) 回りが見づらいというのは感じました。

ODG AR メガネは HoloLens に比べて小さく軽量という大きなメリットがあります。対して HoloLens は空間認識ができ、モーションによるインタラクティブな操作ができます。また Full Windows 10 が動作するため、Windows エコシステムをそのまま利用できる圧倒的な強みがあります。Reticle OS がどこまでできるのかは見極めていく必要がありますが、Android ベースでかつ外部アクセサリと連携が可能というだけでも期待できるデバイスのひとつなのではないかと思います。

まとめ

ODG AR メガネ、HoloLens などのデバイスはそれ単体でどうこうと言うよりも、外部のデバイス / AI / Bot / Drone などとの連携によってよりパワーを発揮するのだと考えています。そのような連携を支える基盤となり、かつ単体での描画性能も正統に進化してきているというのを CES 2017 で感じることができました。